ブランディングデザインの第一人者である西澤明洋氏が投げかけた「Webデザイナーはググるな」という挑発的なメッセージが話題を呼んでいる。検索エンジンに頼ったリサーチが、結果的に似たようなデザインを量産してしまう現状への警鐘だ。企業のブランド価値を視覚的に表現するWebサイトにこそ、模倣ではない独自の思考プロセスが求められている。
参考: 「Webデザイナーはググるな!」エイトブランディングデザイン・西澤明洋が語る、「他とは違うWebサイト」のために必要なこと(株式会社マイナビ)
分析・見解
検索から入ると似た提案ばかりになる
西澤氏の指摘は、現代のWebデザイン業界が抱える構造的な問題を突いている。検索エンジンで「EC サイト デザイン」「コーポレートサイト レイアウト」と調べれば、確かに参考事例は無数に見つかる。しかし、そこから得られるのは「既に成功している表現の再利用」であって、そのブランド固有の価値を伝える表現ではない。
上位表示は最適解の集合とは限らない
この現象は、デザイン業界だけでなくマーケティング全般に見られる。Google検索の上位表示サイトは、SEO最適化された結果として似通った構造を持つ傾向がある。デザイナーがこれらを参考にすれば、アルゴリズムに最適化された「平均的な優等生デザイン」が生まれる一方で、ブランドの個性は失われていく。
事業の本質から考える方が遠回りに見えて近い
西澤氏が主張する「ググらない」アプローチの本質は、クライアント企業の事業の本質、創業者の思い、顧客が感じている価値といった一次情報から出発することだ。検索結果に現れない、その企業だけが持つストーリーや強みを可視化する作業こそがブランディングデザインの核心である。
実際、記憶に残るWebサイトは業界の「お手本」を踏襲していない。むしろ、セオリーを外した大胆なレイアウト、意図的な余白の使い方、予想外のインタラクションによって訪問者の記憶に刻まれる。これは検索で見つけた事例の組み合わせでは生まれない。
ビジネスへの影響
競合を参考にという指示が均質化を招く
この視点は、Web制作を発注する企業側にも重要な示唆を与える。「競合他社のサイトを参考に」という指示は、結果的に自社の独自性を削ぐリスクがある。発注時には競合との差別化ポイント、自社が大切にしている価値、顧客に伝えたい独自のメッセージを明確にすべきだ。
検索だけでなく顧客の声から材料を取る
また、社内のデザインチームやマーケティング担当者は、検索ベースのリサーチだけでなく、顧客インタビュー、現場観察、創業者へのヒアリングといった一次情報の収集に時間を割く必要がある。デザインの「正解」は検索結果の中ではなく、自社のビジネスの本質の中にある。ブランド価値を正しく伝えるWebサイトは、短期的な制作コスト以上の価値を長期的に生み出す投資である。