博報堂BIZ GARAGEが6月18日と7月14日に開催するウェビナーで、「Branded AI Agent™」という独自手法を公開する。この手法の核心は、ブランドを視覚的な記号から、AIとのあらゆる接点で一貫した体験を生み出す「命」へと再定義する点にある。生成AIやAIエージェントが情報の入口となる時代に、企業のブランド戦略そのものを根本から問い直す内容となっている。
参考: 博報堂が「AI時代のブランディング戦略」無料ウェビナーを開催へ(PR TIMES)
分析・見解
AI検索ではブランド名が表に出なくなる
従来のSEOは検索結果ページでいかに目立つかを競っていた。しかしChatGPTやPerplexityのようなAIツールでは、ブランド名すら表に出ないまま情報がまとめられてしまう。利用者が「おすすめのCRMツールは?」と尋ねると、AIが答えを作る過程で、ブランドは数ある引用元の一つに埋もれてしまう。
博報堂が掲げる「印から命へ」の意味
博報堂が「印から命へ」という言葉で示したのは、こうした状況でもブランドが生き残るための方法だ。AIエージェントが参照するデータの出どころ、答えを作るときの文脈、おすすめを選ぶ仕組みのすべてに、ブランドの価値観と個性を埋め込む必要がある。これは従来のコンテンツマーケティングの延長ではない。構造化データ、API設計、AIへの指示文(プロンプト)の作り方、さらにはRAG(=AIが答えを作る際に参照する社内情報の蓄積の仕組み)の構築まで含む、技術とブランドが交わる領域だ。
ロゴではなく「振る舞い」がブランドを決める
興味深いのは、この手法が単なる「AI対策」にとどまらず、ブランドらしさそのものを問い直す点だ。AIとの対話では、目に見えるロゴやキャッチコピーは意味を持たない。代わりに、言葉の選び方、情報を出す順番、質問への答え方といった「振る舞い」がブランドを決める。人間相手のマーケティングでは曖昧にしておけた部分を、機械が理解できる形に言葉で書き出す作業は、企業の価値観を棚卸しすることと同じ意味を持つ。
中小企業にとっても他人事ではない
この取り組みは、大手企業だけの話ではない。中小企業でも、自社サイトにチャットボットを置く際、その受け答えの仕組みにブランドの個性をどう反映させるかは、今後の差をつける要素になる。AIが仲介するあらゆる顧客接点が、ブランド体験を設計する対象になったといえる。
ビジネスへの影響
コンテンツ・サポート・データ整備の3つが変わる
実務では、三つの領域ですぐに影響が出る。まず、コンテンツ戦略の見直しだ。従来のSEO記事に加えて、AIが引用しやすい形(FAQ、構造化データ、根拠がはっきりした主張)への転換が求められる。次に、カスタマーサポートやFAQの作り直しだ。AIチャットボットが自社らしい言葉づかいを体現できるよう、答えのデータベースをブランドの方針に沿って整える必要がある。最後に、データの整備だ。AIプラットフォームが参照する情報源(Google Knowledge Graph、Wikipedia、業界データベースなど)に自社情報を正確に登録し、更新し続ける地道な作業が、AI経由でおすすめされるかどうかに直結する。
マーケティング部門だけでは完結しない
この変化は、マーケティング部門だけでは完結しない。IT部門、カスタマーサポート、法務(AIによる誤情報への対策)、さらには経営層によるブランド定義の明確化までが必要になる、組織を横断した課題だ。